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デビットカードとクレジットカードの消費者保護②

ほとんど同じような経済効果を消費者にもたらす二つのカードの消費者保護規定が不整合というのは違和感があります。銀行とノンバンクの消費者対応の仕方は、そもそも文化的ともいえる違いがあるので、法律で埋めるのであればしっかりと埋めておくべきです。良し悪しは別にして、銀行がノンバンクの領域に入ってきた以上、ノンバンク関連の二法を統一して「統一消費者信用法」に整理統合することは重要です。さらに近隣に存在する銀行も、対消費者取引の分野は、その枠組みの中で整理した方が消費者にとってもわかりやすいものになるのではないでしょうか。

消費者目線といいますが、これほど複雑な法体系が存在すること自体が消費者目線ではないと言わざるを得ません。ただし、この複雑な法体系の裏をかくようなこんなシステムが出てきたら、もっと加盟店も消費者も幸福になれるかもしれません。ほとんど使われる場面を見たことがない「Jデビット」ですが、クレジットカードに比べると加盟店手数料はかなり安くなっています。それをもっと利用しやすいように、キャッシュカード流用型ではなく専用のカードを発行し、加盟店手数料を上げ、その分は人気のあるポイントやマイレージに還元する。それでも加盟店手数料はクレジットカードよりも安く、カードホルダーにも有利な分配ができるはずです。

リボが必要な人には預金口座の貸し越し機能、もしくはカードローンを提供します。貸すのは銀行ですから貸金業法の規制対象にはならないし、割賦販売法で規制することも困難です。Jデビットがこのように衣替えすれば、わが国の決済環境は劇的に変化するはずです。銀行の景品規制は厳しいのですが、もし実現すれば、加盟店にも消費者にも有利な環境が整います。また、消費者の信用度に応じた与信も可能になります。最上位の人はJデビットを使い、銀行に取引してもらえない人はクレジットカードが担当し、カード会社も難しい人には貸金専業者が対応する。信用度に応じた与信システムは理想ですが、こういった棲み分けがあってもいいと思います。

デビットカードとクレジットカードの消費者保護①

同じビザのマークがついているだけですから、手にしてビザのデビットカードとクレジットカードの違いがわかる人は、こういった問題にかなり知識を持った人です。加盟店で判別される必要性はまったくありません。加盟店では、端末を通したときにオーソリゼーションが取れれば何も問題はないからです。利用者は、毎月分をまとめて決済する選択肢と、その都度決済する選択肢のどちらを選んだかはわかっているので、どちらを選ぶかは利用者の責任です。

しかしカード情報が流出すると、複雑な問題が起こります。クレジットカードは、二〇〇八年改正の割賦販売法でその情報保護が新設規定として盛り込まれましたが、そこで規定しているのは割賦販売法第2条の定義にはない一括払いのクレジットカードまでです。第35条の36がその規定ですが、第2項に「二月払購入あっせん」という聞いたことのない取引が書かれています。割賦販売法は、すでに書いたとおり定義に該当する取引だけを規制する仕組みになっています。それは特別法としては当然の作り方で、規制が必要以上に広がらないための対応です。

クレジットカードの一括払いは、利用日によっては割賦販売法の定義に該当することもありますが、たいていの一括払いは法律の適用外です。そこで第35条の36という規定の中で、「二月払購入あっせん」を定義づけすることによって、一括払いのカードであってもカード情報の保護の対象にしようとしました。この定義に書いてあるのは「商品を購入する契約を締結したときから二月を超えない範囲内においてあらかじめ定められた時期までに受領することをいう」だけで、デビットカードも対象になりそうにも読めます。

ただし、この条文の表題は「クレジットカード番号等の適切な管理」ですから、デビットカードはやはり想定していないようです。もしデビットカードの情報が流出した場合は、この規定は及ばないのです。デビットカードでネット通販を利用できる場面はそれほど多くないし、暗証番号での利用に限定され利用の都度メールを送るなど防御にも工夫がこらされているので、仮にカード番号が流出したとしても、クレジットカードのように簡単に利用できるわけではありません。

クレジットカードとデビットカードの利世頻度

経済産業省が作成した資料をベースに、キャッシュレス決済に占めるクレジットカード決済の比率を算出したものを見ると、クレジットカードとデビットカードをひとまとめにしているフランスを除くと、わが国はキャッシュレス決済のほぼすべてをクレジットが占めていることがわかります。つまりわが国では、デビットカードという選択肢がなく、キャッシュレス決済を消費者が望んだ場合はクレジットカードを選ばざるを得ない状況にあるということです。この意味からも銀行はデビットカードにもっと力を入れるべきだと思います。

ただ、ここで注意しなければならないのはキャッシュレス決済の定義です、市中で買い物をするときの代金支払いに限定するのか、それともそれ以外の支払いもキャッシュレス決済にするのかです。家賃という支出を例にしてみましょう。家賃は店子が大家に月末に持参するのが昔からの伝統です。銀行の自動振替が利用されるようになる半世紀ぐらい前までは、一般的だった支払い方です。現在、家賃の支払いで大家さんに現金を持参する店子はかなりの少数派です。理由は、金融機関の自動振替が利用されているからです。公共料金や税金、スポーツジムの会費なども自動振替が利用されています。

おそらく一般的な年収の家庭の支出額のうち、毎月の自動振替の額を考慮に入れると、かなりの割合をキャッシュレスが占めているものと思います。請求額を銀行任せにして、自動的に振り替える制度は、わが国独自の制度のようです。小切手が利用されている国では、請求金額を確かめて金額を自身の手で小切手に書き込み、郵送することで支払いを済ませています。最近ではインターネットバンキングが利用されているようですが、こういった習慣は決済に関する自己責任の意識に強い影響を与えているように思います。この間題は最後に整理してみることにします。

決済とファイナンスは別枠の規制で

わが国は世界的に見て、キャッシュレス決済に占めるクレジットカードの割合が高い国です。クレジットカード発祥国のアメリカは、小切手が現金の代わりに使われていて、それがクレジットカードに変化していった歴史を持ちます。そして最近では、アメリカも含めて多くの国は、クレジットカードよりもデビットカードの利用が大きな潮流となっていて、ヨーロッパではデビットカードの利用の方が多い状況になっています。わが国のキャッシュレス決済自体はまだ低い水準ですが、そこに占めるクレジットカードの割合は、ほぼ全部という珍しい状況になっています。クレジットカード発祥国のアメリカですら、キャッシュレス決済の三分の二を占める程度です。

ある時、アメリカ人の中産階級とおぼしき人に、クレジットカードとデビットカードのどちらを利用しているか、と聞いたことがあります。答えは「デビットカード」でした。理由を聞くと「破産したくないから」と言いました。半分冗談かもしれませんが、正直な答えのようです。クレジットカードとデビットカードの違いは、クレジットカードは月に一度の締め日までの利用分を決められた支払日に決済します。デビットカードは各利用分がその都度決済されます。どちらが小切手に近いかというとデビットカードで、小切手そのものです。アメリカでクレジットカードが発展してきた理由は、小切手の場合は利用の都度銀行で決済されるので、その処理枚数が取引の増大に伴ってとんでもない量になるから、といったことがありました。

クレジットカードの場合も月に一度の最終的な決済は小切手が利用されるとしても、その回数は一回で済みます。ちなみに小切手はネットバンキングに代わってきているので、最近では紙の小切手が利用されることは少なくなっているそうです。さて、ここで話題にしているデビットカードは、後述するわが国の「Jデビット」のことではありません。ビザやマスターのブランドが付いて、それらの決済網を利用するデビットカードです。わが国では、いくつかの銀行がビザ・デビットを発行しています。デビットカードは原則として利用と同時に預金口座から決済される仕組みですが、これはあくまでも原則であって、時期がずれる加盟店もあります。

ビザの加盟店であれば、クレジットカードと同じように利用できます。ただしETCカードの利用はできません。ネットでの利用もクレジットカードほど便利に利用できませんが、ほぼ要件は満たしています。わが国のETCカードがクレジットカードでしか利用できない理由は、料金所を通るたびにすべてのカードのオーソリゼーションをしていないからです。ゲートを通過するわずかな時間にいくら高速化されたからといって、カード会社に全件オーソリゼーションをかけることは不可能なので、リスク負担の部分はカード会社が負うことによって成り立っています。

高速道路のゲートは車のナンバーもわかるし利用の記録も残るので、不正使用の可能性は低い、とカード会社が判断した上でこのような仕組みになっています。これに対してデピットカードは、すべての取引についてオーソリゼーションをするので、利用できないわけです。つまりクレジットカードのオーソリゼーションは、カード会社の与信枠にアクセスして判断するのに対して、デビットカードは預金口座の残高にアクセスしてオーソリゼーションするためにこのようなことになるのです。ただし、違うのはこの部分だけですから、わが国ももっとデビットカードが普及する余地はあるのではないかと思います。

個人への与信に色をつけるべきか

国によっては、個人信用情報の利用範囲がクレジットの与信だけに限らず、就職や家の賃貸契約等の生活一般の広範にわたっている場合があります。つまり個人信用情報がどういう使われ方をするかは、社会の合意が必要になるということです。貸金という限定された局面で見ても、銀行とノンバンクの規制は違ったものになっていますし、そこで利用される個人借用情報の使われ方も違います。さらに、すでに書いたように携帯電話のクレジット払いや、奨学金という名前は金融ではないような消費者ローンに対しても、限定的ではありますが、個人借用情報が一部利用されるようになりました。仮に奨学金が貸金だとしても、銀行や信販会社が扱っている学資ローンは物販クレジットの扱いです。どうにもすっきりしません。

個人信用情報は社会の合意がない中で、必ずしも整合性がとれているとは言い難い使われ方がされており、その上、個人信用情報の立ち位置がすっきりとしないものですから、消費者に合理的に説明することは不可能です。それは業界や規制について理解を求めれば何とかなるというものではありません。警察に捕まって裁判で有罪になると前科一犯という賞罰がつくことは、国民のおそらくすべてが知っています。これは社会の常識であり合意です。個人信用情報の認識はそこまでありませんから、いろいろ危倶される場面が出てくるというわけです。では、どうすべきでしょうか。

個人信用情報機関は、個人信用情報の登録にあたって登録される個人から同意をとっています。同意の内容は、加盟会社にクレジットの与信の際に利用されるというものです。個人信用情報機関の広報もこの範囲です。ところが何度か書いていますが、クレジットの与信での利用と別の何かをからめて個人信用情報が利用されるケースがあります。家賃保証が本来の目的であるにもかかわらずクレジットカードの与信に利用され、社員証がクレジットカードとセットになつているために、クレジットの不払い記録が賃貸契約や雇用契約に影響する、といったケースです。一方、奨学金のように不払いした結果、予想もしなかったクレジットカードの申し込みに影響したり、それ以外のローンにも影響することがあります。

奨学金は不払いをすると以後の与信に影響が出る可能性があるということで、奨学金の利用そのものには問題はありません。こういった不都合や誤解を発生させないためには、きちんと正確な情報を提供することです。現状でどのように個人信用情報を利用しているかを明確に伝えているのは、奨学金の日本学生支援機構だけです。ここは使ってもらうことが重要な目的になっていないので、読みようによっては申し込みを減らすための脅しのようなことが書かれています。クレジットにはメリットもデメリットもあります。メリットはいくらでも挙げることができますが、デメリットの最大のものが使い過ぎであることは、どんな時代でも変わりません。日本学生支援機構のような広報まで必要とは思いませんが、何らかの工夫は業界の姿勢として必要です。

バンクとノンバンク

バンクとノンバンクという言葉があります。銀行とそれ以外の銀行類似業務を行うという区分けです。バンクがノンバンクと決定的に違う点は、他人のお金を預かることが可能かどうかです。為替も銀行業務と位置づけられていますが、銀行口座間の移動でなければクレジットカードや電子マネーもあるので、この部分は銀行固有の業務とは言い難いものとなっています。融資が、最もバンクとノンバンクの境目がない分野です。ノンバンク自体にはリース会社や保険会社、証券会社等も入るのですが、その中のクレジットは物販のクレジットと貸金が対象です。ただしこれらの業務は、銀行の業務でもあります。

貸金業法と割賦販売法は限りなく似たような規制体系になっているのですから、いっそのこと統一消費者信用法にした方がすっきりしてわかりやすくなります。さらに銀行も含めると、もっとわかりやすくなるはずです。まず、銀行と貸金の関係を整理してみましょう。貸金業法が規制の対象としているのは、同法で登録が義務づけられている貸金業者だけです。登録を受けないで貸金業を営むと刑事罰の対象です。無登録のヤミ金業者がこれに該当します。仮に法定金利を守っていてもそれは同じです。さらに貸金業者は、融資した人の貸付記録の個人信用情報機関への登録を義務づけられ、貸し付けにあたっては総量規制を守らなければなりません。

ところが貸金業者として登録する必要のない銀行は、同じ個人への融資業務を行っているにもかかわらず、これらの規制は課せられていません。銀行法で厳しい規制がかかっているので、貸金業法を適用する必要はないというのがその理屈です。貸金業法が改正になると、「収入証明不要」「総量規制適用外」といった銀行の消費者ローンの広告を目にするようになりました。これは、銀行は貸金業法の適用外だから、貸金業法の規制とは無縁であることをうたい文句にしているものです。銀行の消費者ローンも貸金の一つの形態であることは間違いないですから、いかがなものかと思います。

ところが銀行と割賦販売法の関係になると、これが一転します。銀行への割賦購入あっせん業者の登録は、長い間認められていませんでした。いわゆる銀行のクレジットカード本体発行といわれているものです。クレジットカードはこの登録制度で守られていたので、一九八三年に横浜銀行等が発行した地銀バンクカードは、分割払いもリボルビングもできない一括払い専用のカードでした。二〇〇四年に銀行本体への割賦購入あっせん登録が認められるようになると、この部分は消費者ローンとはまったく異なる規制形態なので、割賦販売法の枠の中に入らざるを得なくなりました。これで銀行と割賦販売法の接点ができあがりました。

貸金業法が業規制なのに対して、割賦販売法は行為規制だからです。次に、二〇〇八年の法改正で指定商品制が撤廃になり、個品割賦の定義に関する解釈が変わった結果、加盟店に直弘いする消費者ローンは個別信用購入あっせんに該当するということになって、銀行は個別信用購入あっせんの登録をしなければならないことになりました。銀行にしてみれば、ノンバンクの法律である貸金業法は適用外で、なぜ割賦販売法は適用になるのか疑問の声もあがったそうです。こうなると貸金業法の量的与信規制である総量規制は適用にならないにしても、似たような割賦販売法の支払い可能見込額は適用になることになります。これに銀行を交えると、さらに複雑な状況になるわけです。しかもクレジットカードの場合も、必ずしも現状をきちんと整理して規制できているわけではありません。

銀行も交えた消費者借用統一法

わが国のクレジットの原型が「伊予の椀舟」から始まったことはすでに書きました。物品販売の一つの方法として生まれたのが物販のクレジットです。では、貸金がいつから始まったかというと、人類最古の職業というくらいですから、お金が誕生したと同時に始まっていました。この二つの与信形態の現在を伝えるために、これまでいろいろな角度から眺めてきました。似たような制度で銀行があります。銀行は金貸しの進化形ですから、それほど古い歴史があるわけではありません。その起源には諸説があるのですが、中世イングランドの話を紹介します。

金の価値は、古今東西を問わず普遍的です。貨幣に使われたのは銀が先ですが、すぐに金に代わられました。当時のイングランドでは金貨が使われていました。金は溶かして宝飾品にすることもできて、形を変えたからといって価値に変化があるものでもありません。これは現代も当時も同じです。イングランドにあった金を加工する業者は金匠といわれていました。そこには、金を扱うのですから頑丈な金庫がありました。イングランドの人々は保管料を払って金貨を金匠に預けていました。

ここである法則が発見されます。金貨は預かっている量のある一定割合しか引き出されない、という法則です。ということは、残りの眠っている分は貸し出しに回しても何も問題はありません。それどころか預かっている分を引き出し分にすれば、預かっている分の何倍も貸し出すことができるのです。これが銀行の信用創造の始まりです。金貨の段階でこれが行われているだけなら、実物経済の範囲で収まりますが、金貨を預かったときの預かり証が銀行券になって取引に利用されるようになると、お金の循環速度はさらに加速しますからバブルが起きます。

現代のバブルも、だいたい根本にある理屈はこれと似たようなものです。銀行の信用創造は他人のお金を使って、その価値以上の価値を作り出し、その過程で負債が債権に転じて金利を生み、銀行に戻ってくることで成り立っています。個人が使うクレジットの場合は、負債によって価値を生み出すところは同じですが、金利は払う一方の立場です。企業であれば負債を設備投資や技術開発に回すことによって、企業の価値をそれ以上のものにすることが可能です。ところが消費者の場合は、再生産という概念にあまり結びつくことはありません。結果的に、いろいろな問題が起きます。

携帯電話の不払い情報にも同じ現象が

二〇一三年になると、日本クレジット協会だけではなく政府広報にも注意喚起情報が掲載されました。固定電話を持たずに携帯電話だけという人が若い人を中心に増えていますから、携帯電話の不払い情報が個人借用情報機関に登録されるのであれば、固定電話の不払い情報も登録しないとあまりにもバランスが悪いように思います。政府広報は国民に対する親切な広報と見られないこともありませんが、裏から見ると、政府が携帯電話四社の不払い防止を広報しているわけで、ネットに掲載するだけでそれほどお金がかかるとは思えないにしても、税金の無駄であるともいえます。携帯電話は法律の支払い可能見込額の判定からは、日常的必然性が高いということで外されたものです。

そもそもその程度の金額なのですから、念入りに規制対象にするほどのこともなかったのかもしれないと思います。個人情報が社会のあらゆる場面で利用されているアメリカでは、クレジット・スコアといわれる個人信用情報がないと生活がままならないほど不便と不利益があります。そのため、クレジット・スコアを持つために必須の社会保障番号を持たない移民や、個人スコアのない人向けに家賃・公共料金、前払いカード等の情報を収集する専門の情報センターもあるそうです。その情報は既存の情報センターに提供されて、クレジット・スコア化されるといいます。

わが国の個人信用情報機関は、アメリカを手本に発展してきました。しかし仕組みは同じだとしても、個人信用情報機関の社会への浸透度があまりにも異なります。アメリカという社会の特性の下に長い年月をかけて出来上がって、社会に受け入れられている制度が、そのままわが国の社会に受け入れられるとは限りません。消費者目線という言葉が独り歩きしているようですが個人信用情報に関しては、それとは逆に完全に業者目線と思えてなりません。

個人信用情報の利用の同意に関する経産省の見解

クレジットの情報が貸金と物販で分断された問題を指摘しましたが、分断を是とした経産省の見解は次のとおりです。

「同一の信用情報機関が貸金業法及び割賦販売法双方の指定信用情報機関に指定されるといった場合には、業態の異なる信用情報が交流されることとなりまして、当初、消費者が同意していた利用目的、例えば、みずからはクレジット情報をクレジット事業者に提供するということで同意していたというものを超える可能性があるのではないかということです。したがいまして、本人の同意により特定された利用目的の達成に必要な範囲内で、業態の異なる信用情報の交流がなされる必要があるのではないかというのが、現状の本人の同意との関係での問題点です」(消費経済審議会割賦販売部会(二〇〇八年十二月十一日)における経産省当局の見解/同部会議事録から)

この見解は、片方を貸金の情報、片方は物販のクレジットの情報を想定していますが、貸金の部分を家賃債務に置き換えるとそのまま当てはまります。家賃保証の審査のために割賦販売法の指定個人信用情報機関に照会するというのは論外ですが、仮に家賃保証がクレジットカードの入会とセットになっていたとしても、法令とこの見解の趣旨からすると、やはり潜脱の懸念は拭えません。クレジット会社がビジネスにしているから、家賃保証もクレジットビジネスの一つのジャンルという考えもありそうですが、それはあまりに乱暴です。奨学金の個人信用情報や、家賃保証の個人情報が一般に利用される状況になると、次のような問題が起こります。例えば奨学金を受けていて卒業後就職ができずに不払いを起こし、全銀協の個人信用情報センターにブラック登録されると、住宅ローンはおろか賃貸住宅にも住めないといった事態に陥ります。全銀協の個人信用情報センターに登録されると、ブラック情報だけはCRINによって他機関と情報交流されるので、クレジットカードの審査の際に反映されるからです。

住居費まで個人信用情報の対象に

家賃債務は、貸金契約やクレジット契約とは異なり、住居の賃貸借契約に基づき住居を使用する対価として発生するものです。しかも金利は発生しません。月払いによって債務の弁済が行われることはいずれの債務も同様ですが、家賃債務の性質は他の債務と異なり、貸金債務やクレジット債務に優先して支払われるものです。家賃は衣食住という人の生活の根幹に関わるところにあるので、まさにライフラインとして支払いの順位は最優先になっています。このようなことがあるので、いろいろ問題はあるにしても改正割賦販売法の支払い可能見込額の生活維持費に住居関係の費用が入って、支払い可能見込額から排除されているはずです。

現に、『平成20年版割賦販売法の解説』(経済産業省商務情報政策局取引信用課編)には「クレジット債務の返済のために生活維持費まで奪われることになるということは、多重債務者対策の本旨にもとることにもなりかねないことから、包括支払可能見込額を算定するに当たっては生活維持費を除くこととしている」と書いてあります。ところが個人信用情報を使って、家賃債務を保証するビジネスが一部のクレジット会社で行われるようになっています。割賦販売法の改正はクレジット会社にも与信先の縮小を余儀なくしましたから、新しいビジネスとしてクレジットの与信に近いところにある家賃保証に進出したものと思われます。

家賃保証は、人間関係が希薄になった現代社会を投影したビジネスともいえます。つまり、保証人を頼む人間関係の煩わしさから解放されて、好きな所に賃貸住宅を借りたいというニーズに応えたものです。あまり知られてはいませんが、全国規模で営む専業会社もあります。クレジット会社の家賃保証は、賃貸住宅とクレジットカードの申し込みを同時に賃借申込人にさせます。クレジットカードの与信は個人信用情報機関を使いますから、そこに多重債務や不払いの情報があればクレジットカードは発行しません。このクレジットカードは、家賃の支払いにも使うためです。発行されない場合は、すなわち家賃の保証契約も成立しません。

賃借申込人は、従来のようにどこからか保証人を探してこなければ賃貸住宅を借りられないことになります。つまりクレジットの情報が、本人の予期せぬ賃貸住宅の情報に利用されたわけです。いくつか問題点があります。個人信用情報は、貸金業法(第41条の38)にも割賦販売法(第35条の3の59)にも目的外利用等の禁止規定があります。目的外利用等の禁止というのは登録された個人信用情報を、それを利用するクレジット会社が、クレジットの審査業務以外には利用しないということです。つまり貸金業法や割賦販売法の指定個人信用情報機関に登録されている情報は、クレジットの与信以外に使うことはできないのです。

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