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決済とファイナンスは別枠の規制で

わが国は世界的に見て、キャッシュレス決済に占めるクレジットカードの割合が高い国です。クレジットカード発祥国のアメリカは、小切手が現金の代わりに使われていて、それがクレジットカードに変化していった歴史を持ちます。そして最近では、アメリカも含めて多くの国は、クレジットカードよりもデビットカードの利用が大きな潮流となっていて、ヨーロッパではデビットカードの利用の方が多い状況になっています。わが国のキャッシュレス決済自体はまだ低い水準ですが、そこに占めるクレジットカードの割合は、ほぼ全部という珍しい状況になっています。クレジットカード発祥国のアメリカですら、キャッシュレス決済の三分の二を占める程度です。

ある時、アメリカ人の中産階級とおぼしき人に、クレジットカードとデビットカードのどちらを利用しているか、と聞いたことがあります。答えは「デビットカード」でした。理由を聞くと「破産したくないから」と言いました。半分冗談かもしれませんが、正直な答えのようです。クレジットカードとデビットカードの違いは、クレジットカードは月に一度の締め日までの利用分を決められた支払日に決済します。デビットカードは各利用分がその都度決済されます。どちらが小切手に近いかというとデビットカードで、小切手そのものです。アメリカでクレジットカードが発展してきた理由は、小切手の場合は利用の都度銀行で決済されるので、その処理枚数が取引の増大に伴ってとんでもない量になるから、といったことがありました。

クレジットカードの場合も月に一度の最終的な決済は小切手が利用されるとしても、その回数は一回で済みます。ちなみに小切手はネットバンキングに代わってきているので、最近では紙の小切手が利用されることは少なくなっているそうです。さて、ここで話題にしているデビットカードは、後述するわが国の「Jデビット」のことではありません。ビザやマスターのブランドが付いて、それらの決済網を利用するデビットカードです。わが国では、いくつかの銀行がビザ・デビットを発行しています。デビットカードは原則として利用と同時に預金口座から決済される仕組みですが、これはあくまでも原則であって、時期がずれる加盟店もあります。

ビザの加盟店であれば、クレジットカードと同じように利用できます。ただしETCカードの利用はできません。ネットでの利用もクレジットカードほど便利に利用できませんが、ほぼ要件は満たしています。わが国のETCカードがクレジットカードでしか利用できない理由は、料金所を通るたびにすべてのカードのオーソリゼーションをしていないからです。ゲートを通過するわずかな時間にいくら高速化されたからといって、カード会社に全件オーソリゼーションをかけることは不可能なので、リスク負担の部分はカード会社が負うことによって成り立っています。

高速道路のゲートは車のナンバーもわかるし利用の記録も残るので、不正使用の可能性は低い、とカード会社が判断した上でこのような仕組みになっています。これに対してデピットカードは、すべての取引についてオーソリゼーションをするので、利用できないわけです。つまりクレジットカードのオーソリゼーションは、カード会社の与信枠にアクセスして判断するのに対して、デビットカードは預金口座の残高にアクセスしてオーソリゼーションするためにこのようなことになるのです。ただし、違うのはこの部分だけですから、わが国ももっとデビットカードが普及する余地はあるのではないかと思います。