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TPP時代に乗り遅れないために②

二〇一三年にTPP交渉参加が決まったように、国際化はもう止められないところまできています。国際化とは「国際競争力のない国は負ける」の同義語です。正確に言うと、国際競争力のない部門は負けるのに等しいはずです。それは商品の品質やブランドカであることもあるし、価格であることもあります。わが国のクレジットカードをこの現象に当てはめると、間違いなく負けます。とにかく加盟店手数料が高いのです。

これには決済のネットワークの問題もあるし、コストがかかる規制も関係しています。海外決済代行会社の話をしましたが、彼らが出てくる余地があるのは、わが国に比べて圧倒的に加盟店手数料が安いからです。お隣の韓国では、平均的な加盟店手数料は一・八五%だといいます。このレートは加盟店手数料が高いことに不満をもった中小加盟店が不買運動を行った結果です。

不買運動は消費者の権利を主張する最後の手段ですが、韓国では加盟店がそれを行ったのです。加盟店手数料に影響力のある大手カード会社のカードを取り扱わないことを、加盟店が徹底したのです。わが国もなんとかしないと、本当におかしなことになるかもしれません。いや、本当に消費者のことを考えるのならば、国際ブランドの越境ルールを変更して、どこの国で加盟店を獲得してもよしとした方がいいのかもしれません。ただし、その時は消費者保護規定も国際水準に揃っていなければなりません。

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TPP時代に乗り遅れないために①

つい最近のことですが、スマートフォンがクレジットカード加盟店になるという画期的なシステムが登場しました。加盟店といえば、法人格がないにしても何か営業をしているところと決まっていました。ところが、スマートフォンをクレジットカード端末にしてしまうというこの仕組みは、個人でも加盟店になれます。個人を加盟店にするというのは、従来のカード会社の発想にはないものでした。ただし、まったく利用できないというわけではなく、ネットオークションなどで擬似的には可能でした。それが本当に、正真正銘の個人が加盟店になれるのです。

従来の発想にはないまったく画期的な仕組みです。割賦販売法の規制に当てはめることもできません。つまり、未然防止の考え方でこの加盟店を収めようとすると、収まらないのです。これで深刻な問題が起きなければ、新しいイノベーションとして評価されることもあるかもしれません。しかし、大きなリスクが心配です。消費者が加盟店になるリスクは決して小さくないからです。誰でも思いつくのは、ショツビング枠現金化の胴元になれることです。もしかしたら、うまくやれば儲かるかもしれないし、自分のクレジットカードで自己ファイナンスすることが可能になるかもしれません。

ところが、加盟店になるリスクを丸かぶりするリスクから避けることはできません。チャージバックされるような取引で潰される可能性もないとはいえません。もし、この仕組みが成功するとしたら、自己責任が貫徹される社会の合意があることです。スマートフォンを使ったクレジットカード決済が生まれたのは自己責任の考え方が強いといわれているアメリカですが、そのまま導入するには、同じような自己責任に関する合意が日本にもあることが条件です。とても懸念されるところです。


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消費者保護の国際基準

国際ブランドの消費者保護には、チャージバックが使われています。これは、消費者の買い物に問題が発生したときは、申し出を受けたイシュアーが当該決済についてアクワイアラーに調査を求め、加盟店の不正等が発生したときは、イシュア一に返金ないし売り上げを取り消すという仕組みです。当然、返金や取り消しの効果は消費者に及びますから、消費者保護になるわけです。ここには未然防止の考え方はありません。アクワイアラーが怪しい加盟店と契約を結ぶと、イシュアーからチャージバックをたくさん受けてアクワイアラーが被害者になるとも限らないので、当然、加盟店管理の考え方は働きます。

アクワイアラーの審査基準にまでは踏み込む必要がないのです。チャージバックを割賦販売法の支払い停止の抗弁と同様のものと考えている人がいますが、まったく違うものと理解した方がいいかもしれません。チャージバックが対象にしているのは、基本的に通信販売でのクレジットカード決済です。例えば、通信販売で商品が届かない、予約して決済まで済ませたホテルに泊まれなかった、第三者による不正、伝票の改ざんなどがその対象です。しかし、加盟店とカードホルダーの間の売買契約についてまでは介在しません。支払い停止の抗弁は、まさにこの部分が対象になっていますから対照的です。

チャージバックは、基本的にはクレジットカードが小切手(現金)と同じものであるという前提で、対面取引は対象としていないのです。チャージバックは、まさに事後救済ということができると思います。これに対して、支払い停止の抗弁は事前規制です。どちらが安いコストで済むかは考えるまでもないことです。同じノンバンクでもお金を預かって投資する取引には、厳しい規制が必要です。この場合の救済は預けたお金を取り戻すということになりますが、そう簡単ではありません。クレジットの救済は負債を消すだけですから、未然防止にそれほど傾注する必要はないと思います。

取引の事後規制

生命・身体の危害についての未然防止については、いったん起きると取り返しがつきませんから、形はともあれ必要であることは否定しません。ただそれを後押ししているのは、どうも大多数の消費者の声の代弁者ではないような気がします。「消費者の目線で見れば」といった言葉がありますが、消費者の目線というのは、”いいもの”を”安く”そして”安全に”手に入れたいに尽きると思います。いくら安全でも、性能は変わらず値段も高いというのでは、敬遠したくなります。例としてふさわしいかどうかわかりませんが、使い捨てライターの規制が変わって簡単に発火しない構造になりました。その結果、価格はだいたい一〇〇円だったものが、一二〇円になりました。

一般的な消費者の目線では、「何もそんなことまでしなくてもいいのでは」と感じるのではないでしょうか。極端かもしれない例を挙げましたが、一定の必要性がある生命・身体の安全に対して、取引については事前の安全規制ではなく、事後の規制で済むものがたくさんあります。その一つがクレジットです。クレジットは消費に利用する手段であり、自動車が最高額であってそれほど大きな金額にはなりません。クレジットカードの場合は、もっと小さい金額です。クレジット会社からの与信の成否について、つまり返済されるかどうかについては、本来会社の責任のはずです。もし多重債務が問題になるのだとすれば、一律の総量規制(貸金業法)や支払い可能見込額(割賦販売法)で規制するのではなく、事後にペナルティーが科されるような仕組みの方が会社は知恵を使います。

例えば、金利については利息制限法はそのままにして、出資法の上限金利を上げた融資を認める。その代わり、返済期間に期限を設けて、一定期間を超えた場合は過払い金を認める、とすれば会社は少ない融資額で一定の利益を稼ぐことができます。借り手も金利が高いのでそれほど借りる機会はなくなるはずです。さらに、早く返済させないと過払い金というお釣りが返ってくるのですから、与信姿勢は慎重になるはずです。クレジットカードについては、二〇〇八年の改正割賦販売法で消費者被害防止法に転換しましたが、これも同様に事後規制で十分な成果が期待できると思います。

生命・身体への危害の未然防止

それでも、個人では守りきれない生命・身体への危害防止もあります。これを防ぐのは政府の仕事です。二〇一一年の東日本大震災とともに起きた原発事故は、いまだに被災地に大きな爪痕を残しています。個人のセキュリティに対する意識は年々高まっていて、警備会社に家の管理を頼む人や防犯カメラを設置するマンションも増えていますが、原発事故のような個人の責任では負いきれない安全については政府がすべきです。生命・身体への危害は、原状回復がほぼ不可能といっていいからです。

ところがここに難しい問題があります。薬は、生命・身体のまさに薬なのですが、服用を間違えると危害を及ぼすことがあります。お酒は百薬の長といいますが、過ぎれば毒になるのと同じです。二〇一三年に、薬のネット販売に関して、画期的というか当たり前の判決が最高裁から出されました。かいつまんで言うと、薬事法の改正に伴って改正された省令で市販薬のネット販売を禁止したのは、政府の権限の範囲を超えているので違法である、という判断です。つまり禁止以前の状態に戻って、市販薬はネット通販で買うことができるようになったという判決です。

こういった規制は割賦販売法にもあります。個人信用情報のファイアウォールによく似ています。法律の範囲を超えているかどうかは別として、担当課の判断で一つの政策が実現してしまったからです。法律に付随する省令は正確には「施行規則」といい、法律が国会で決まるものに対して、大臣の決裁で決まるものです。担当大臣は所管の省のたくさんある法律のすべてを熟知しているわけはなく、省令は担当課が決めれば実質的に決まってしまう性格のものです。それが国民に生活に著しく影響を及ぼすとしたら、極めて危険なことです。

法を執行する役目の行政官が法律まで作ってしまうのですから、異常な事態といっても過言ではないかもしれません。しかもネット販売がダメとはいいながら、配置薬についてはそのまま販売が続けられました。対面しない販売方法を禁止するというのなら、なぜ配置薬がいいのか理解できません。こんにゃくゼリーが危険でなぜ餅が危険ではないのか、といった議論に似ていますが、このように政府の規制というものは広げようと思ったらいくらでも広がるものなのです。

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