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法改正が招いた個人借用情報の危機

二〇〇八年の割賦販売法改正は、その前年に行われた貸金業法の規制内容の影響を大きく受けて、改正法案提出時にほとんど貸金業法と変わりがない法律になりました。その傾向はさらに続いています。割賦販売法のような特別法は、法律、政令、施行規則(省令)がワンセットになっています。それに以前は通達がありました。それが一九九人年、旧大蔵省の時代に世間を騒がせたノーパンしゃぶしゃぶ事件があって、一転しました。この事件は業界と規制官庁の癒着が問題とされたものですが、通達という官僚の裁量に任せた行政スタイルが諸悪の根源という空気がもたらされ、通達が廃止になって金融庁が大蔵省から分離されたのでした。

その結果どうなったかというと、貸金業法を管轄する金融庁では監督指針を作成し、法律で認定団体を取り決め、その団体で自主規制を作成するようになりました。割賦販売法もほぼ同じです。監督方針の作成は二〇一二年と法改正から遅れましたが、金融庁と同じようなスタイルで作られています。ちなみに金融庁は管轄の業態ごとに「監督指針」がありますが、経産省の割賦販売法では「監督方針」です。同じような作りなので、同じ名前で何が悪いのかわかりませんがこのようになっています。さて、改正割賦販売法で指定信用情報機関を作って、与信の数値基準を作った結果、国民の貸金も含めたノンバンクからの債務はすべて把握されることとなりました。

同じ債務でも銀行が行う消費者ローンについては規制対象外ですから、この部分は除外されています。これはいろいろ問題をはらんでいます。貸金業法が施行になって以来、銀行の消費者ローンに関する広告が目につくようになっています。その広告に「総量規制対象外」とか「収入証明いりません」という言葉が入っていることがあります。銀行は貸金業法の規制対象から外れているので、同じように消費者に貸し出す消費者ローンであるにもかかわらず規制の対象になっていないのです。金利は利息制限法の範囲内ですが、これは貸金業者も同じです。そもそも銀行は預金によって資金調達をしています。

それに金利を付けて貸し出すわけですから、それほど高い金利である必要はありません。高いのは貸金業者やカード会社が保証を付けて銀行がリスクをとらない仕組みを作っているからです。銀行がリスクをとるのであれば、調達金利が違うのですから金利が同じ水準ということはあり得ないはずです。さて、法律が与信基準を作ったことの一番の問題点は、基準外の与信が法令違反になったということです。もちろん多重債務の問題は行き過ぎたクレジット会社の与信姿勢にあったのですから、法律の目的としては正しいかもしれません。

しかしそれは同時に、かつて信用調査の”いろは”として存在した「クレジットの3C」を死語としてしまいました。そして実質的に個人信用情報の使い方は、ブラック顧客の排除のためになってしまいました。クレジットは性善説に基づいて与信することによって、多くの人にクレジットの便益を供与してきたのですが、一度ブラック情報に登録されると、以後、大変不自由な事態に陥ることを警告することになってしまったのです。

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