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個人信用情報の利用の同意に関する経産省の見解

クレジットの情報が貸金と物販で分断された問題を指摘しましたが、分断を是とした経産省の見解は次のとおりです。

「同一の信用情報機関が貸金業法及び割賦販売法双方の指定信用情報機関に指定されるといった場合には、業態の異なる信用情報が交流されることとなりまして、当初、消費者が同意していた利用目的、例えば、みずからはクレジット情報をクレジット事業者に提供するということで同意していたというものを超える可能性があるのではないかということです。したがいまして、本人の同意により特定された利用目的の達成に必要な範囲内で、業態の異なる信用情報の交流がなされる必要があるのではないかというのが、現状の本人の同意との関係での問題点です」(消費経済審議会割賦販売部会(二〇〇八年十二月十一日)における経産省当局の見解/同部会議事録から)

この見解は、片方を貸金の情報、片方は物販のクレジットの情報を想定していますが、貸金の部分を家賃債務に置き換えるとそのまま当てはまります。家賃保証の審査のために割賦販売法の指定個人信用情報機関に照会するというのは論外ですが、仮に家賃保証がクレジットカードの入会とセットになっていたとしても、法令とこの見解の趣旨からすると、やはり潜脱の懸念は拭えません。クレジット会社がビジネスにしているから、家賃保証もクレジットビジネスの一つのジャンルという考えもありそうですが、それはあまりに乱暴です。奨学金の個人信用情報や、家賃保証の個人情報が一般に利用される状況になると、次のような問題が起こります。例えば奨学金を受けていて卒業後就職ができずに不払いを起こし、全銀協の個人信用情報センターにブラック登録されると、住宅ローンはおろか賃貸住宅にも住めないといった事態に陥ります。全銀協の個人信用情報センターに登録されると、ブラック情報だけはCRINによって他機関と情報交流されるので、クレジットカードの審査の際に反映されるからです。

住居費まで個人信用情報の対象に

家賃債務は、貸金契約やクレジット契約とは異なり、住居の賃貸借契約に基づき住居を使用する対価として発生するものです。しかも金利は発生しません。月払いによって債務の弁済が行われることはいずれの債務も同様ですが、家賃債務の性質は他の債務と異なり、貸金債務やクレジット債務に優先して支払われるものです。家賃は衣食住という人の生活の根幹に関わるところにあるので、まさにライフラインとして支払いの順位は最優先になっています。このようなことがあるので、いろいろ問題はあるにしても改正割賦販売法の支払い可能見込額の生活維持費に住居関係の費用が入って、支払い可能見込額から排除されているはずです。

現に、『平成20年版割賦販売法の解説』(経済産業省商務情報政策局取引信用課編)には「クレジット債務の返済のために生活維持費まで奪われることになるということは、多重債務者対策の本旨にもとることにもなりかねないことから、包括支払可能見込額を算定するに当たっては生活維持費を除くこととしている」と書いてあります。ところが個人信用情報を使って、家賃債務を保証するビジネスが一部のクレジット会社で行われるようになっています。割賦販売法の改正はクレジット会社にも与信先の縮小を余儀なくしましたから、新しいビジネスとしてクレジットの与信に近いところにある家賃保証に進出したものと思われます。

家賃保証は、人間関係が希薄になった現代社会を投影したビジネスともいえます。つまり、保証人を頼む人間関係の煩わしさから解放されて、好きな所に賃貸住宅を借りたいというニーズに応えたものです。あまり知られてはいませんが、全国規模で営む専業会社もあります。クレジット会社の家賃保証は、賃貸住宅とクレジットカードの申し込みを同時に賃借申込人にさせます。クレジットカードの与信は個人信用情報機関を使いますから、そこに多重債務や不払いの情報があればクレジットカードは発行しません。このクレジットカードは、家賃の支払いにも使うためです。発行されない場合は、すなわち家賃の保証契約も成立しません。

賃借申込人は、従来のようにどこからか保証人を探してこなければ賃貸住宅を借りられないことになります。つまりクレジットの情報が、本人の予期せぬ賃貸住宅の情報に利用されたわけです。いくつか問題点があります。個人信用情報は、貸金業法(第41条の38)にも割賦販売法(第35条の3の59)にも目的外利用等の禁止規定があります。目的外利用等の禁止というのは登録された個人信用情報を、それを利用するクレジット会社が、クレジットの審査業務以外には利用しないということです。つまり貸金業法や割賦販売法の指定個人信用情報機関に登録されている情報は、クレジットの与信以外に使うことはできないのです。

奨学金ブラックリストの問題点

まず、個人信用情報の使い方が間違っています。登録を受け入れている全銀協のセンターも同じです。個人信用情報にブラックリストはないと説明されていますが、それは個人信用情報機関が客観的な事実に基づく取引情報を登録しているからであって、情報に色はないからだと説明しています。しかし奨学金で登録されるのは、延滞情報というブラック情報だけです。ところが、正常取引を含めてすべて登録すると驚くべきことが起きます。ここに在学中に毎月五万円の奨学金を受けていた大学生がいたとします。彼が卒業までに借り入れる総額は、二四〇万円になります。これを卒業して半年後から毎月返済します。

月々にすると一万六〇〇〇円ぐらいで、返済期間一五年です。つまり、卒業と同時に二四〇万円の負債を抱えることになるのです。それはどういうことかというと、就職した会社の給料がいくらかにもよりますが、負債の額が年収の三分の一以内ということはないと思います。奨学金を借りた学生のほとんどは、貸金業法の総量規制をオーバーする負債を背負って社会に出ることになるのです。割賦販売法の支払い可能見込額の場合は、支払額の年間合計額は一人万円ですから、それほど影響はありません。奨学金は、名前は奨学金ですが学資ローンの一種であることは間違いありません。

しかも、貸金業法にはまったく該当しない貸付です。銀行が行う消費者金融に近いものはありますが、それとも違うようです。順調に返済が進んでいればいいのですが、人生がそれほどうまくいかないことは若い時ほど多いものです。何かの都合で返済が滞る事態に陥りそうになつて、銀行のカードローンをまず借りて、その返済がうまくいかなくなって貸金業者やクレジットカードのキャッシングで穴埋めするようになると、確実に多重債務状態に陥ります。奨学金の利用者が増えているということは、進学率の上昇と家庭の学費負担の重圧感そのものだと思いますが、それはそのまま信用収縮の一局面だと思います。

奨学金に導入されたブラックリスト

旧日本育英会が行っていた奨学金事業は、その他の関連事業と併せて二〇〇四年に独立行政法入日本学生支援機構に移管されました。記憶にある方も多いと思いますが、ここでは不払いが問題になっています。まず日本学生支援機構の業務規模について調べてみましょう。二〇一二年三月末の奨学金の貸付残高は七兆二七六〇億円あります。このうち、一種といわれている奨学金は二兆四三〇四億円で、二種は四兆八四五六億円です。一種というのは、金利が免除になる奨学金のことで、二種は三%と低利ですが金利があります。どのくらいの学生が奨学金を受けているかというと四七〇万人で、第一種は一六九万九〇〇〇人、第二種は二七三万人です。これが大学生のどのくらいの割合にあたるかというと、ほぼ三人に一人になります。

不況の影響で奨学金を利用する学生が増えているといいます。それで問題になつている不払い・延滞額ですが、延滞の定義は三ヵ月以上の不払いということになっているようで、金額にして二六四七億円あります。金額での延滞率で見ると、五・五%になります。ここ一〇年では三倍近くになっています。大学を出ても就職せずにフリーターになったり、就職してもすぐ辞めてしまったりする若者が問題になっていますが、異常な増え方です。これが銀行やノンバンクの貸付だった場合は、経営不振で破綻の危機に陥っています。そこで、同機構は増え続ける延滞に対応することにしました。一つは民間の債権回収専門会社に業務委託することです。

債権回収専門会社はサーピサーといわれている会社で、弁護士法の特例として制定された「債権管理回収業に関する特別措置法」に基づいて、法務大臣が許可した業者だけが営める会社です。奨学金の督促は、基本的には電話でするようです。その督促業務は同機構の職員はもちろんですが、「業務を委託した債権回収会社から行うこともあります」と同機構のホームページにはあります。その督促の時間帯は、午前九時~午後九時までです。これは貸金業法の督促行為の規制に準じた内容です。

さらにホームページには「本人の勤務先に電話する場合もあります」とあります。貸金業法と割賦販売法の督促行為の規制では、勤務先に電話することを禁止してはいませんが、特別な事情があるときに限定されていますから、かなり踏み込んだ印象を受けます。なにより一般の人にそれほど認知されているとは思えないサーピサ一会社が、本人の勤務先に電話するというのですから、あまり気持ちがいいものではないでしょう。それが嫌なら借りてくれなくてもいい、という意思表示のようにも思えますし、親切心からの対応という気もします。

同機構では、延滞情報を全銀協の情報センターに登録する他に、個人信用情報機関に登録されている最新情報を入手して住所確認に使うとあります。これはおそらく、住所を変更しないで延滞に陥っている人が多いことの証しだと思います。そして機構以外からの借り入れ情報を入手して、多重債務に陥っている場合は法的措置をとる場合がある、個人信用情報機関に延滞というブラック情報が登録されると、クレジットカードが使えなくなったり、住宅ローンが組めなくなる場合がある、とホームページで告知というより警告しています。

法改正が招いた個人借用情報の危機

二〇〇八年の割賦販売法改正は、その前年に行われた貸金業法の規制内容の影響を大きく受けて、改正法案提出時にほとんど貸金業法と変わりがない法律になりました。その傾向はさらに続いています。割賦販売法のような特別法は、法律、政令、施行規則(省令)がワンセットになっています。それに以前は通達がありました。それが一九九人年、旧大蔵省の時代に世間を騒がせたノーパンしゃぶしゃぶ事件があって、一転しました。この事件は業界と規制官庁の癒着が問題とされたものですが、通達という官僚の裁量に任せた行政スタイルが諸悪の根源という空気がもたらされ、通達が廃止になって金融庁が大蔵省から分離されたのでした。

その結果どうなったかというと、貸金業法を管轄する金融庁では監督指針を作成し、法律で認定団体を取り決め、その団体で自主規制を作成するようになりました。割賦販売法もほぼ同じです。監督方針の作成は二〇一二年と法改正から遅れましたが、金融庁と同じようなスタイルで作られています。ちなみに金融庁は管轄の業態ごとに「監督指針」がありますが、経産省の割賦販売法では「監督方針」です。同じような作りなので、同じ名前で何が悪いのかわかりませんがこのようになっています。さて、改正割賦販売法で指定信用情報機関を作って、与信の数値基準を作った結果、国民の貸金も含めたノンバンクからの債務はすべて把握されることとなりました。

同じ債務でも銀行が行う消費者ローンについては規制対象外ですから、この部分は除外されています。これはいろいろ問題をはらんでいます。貸金業法が施行になって以来、銀行の消費者ローンに関する広告が目につくようになっています。その広告に「総量規制対象外」とか「収入証明いりません」という言葉が入っていることがあります。銀行は貸金業法の規制対象から外れているので、同じように消費者に貸し出す消費者ローンであるにもかかわらず規制の対象になっていないのです。金利は利息制限法の範囲内ですが、これは貸金業者も同じです。そもそも銀行は預金によって資金調達をしています。

それに金利を付けて貸し出すわけですから、それほど高い金利である必要はありません。高いのは貸金業者やカード会社が保証を付けて銀行がリスクをとらない仕組みを作っているからです。銀行がリスクをとるのであれば、調達金利が違うのですから金利が同じ水準ということはあり得ないはずです。さて、法律が与信基準を作ったことの一番の問題点は、基準外の与信が法令違反になったということです。もちろん多重債務の問題は行き過ぎたクレジット会社の与信姿勢にあったのですから、法律の目的としては正しいかもしれません。

しかしそれは同時に、かつて信用調査の”いろは”として存在した「クレジットの3C」を死語としてしまいました。そして実質的に個人信用情報の使い方は、ブラック顧客の排除のためになってしまいました。クレジットは性善説に基づいて与信することによって、多くの人にクレジットの便益を供与してきたのですが、一度ブラック情報に登録されると、以後、大変不自由な事態に陥ることを警告することになってしまったのです。

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